山梨県中巨摩郡にお住まいの秋山光章さん(45才)は小学校の教員をしている。子供の頃からの野球少年であったが、当時は山梨出身の巨人・堀内投手が活躍していた頃で、自分の周りはジャイアンツ・ファンだらけであった。 そんな中で、「頑張るがいつも2位どまり」、「縦縞のユニフォームが格好いい」タイガースが好きになり、村山の闘志に魅了され、一人、熱烈な阪神ファンとなる。
周囲にタイガース・ファンは皆無であったが、1985年の優勝時には、妻にカメラを持たせ、風呂場で頭からビール掛けをして記念写真に残すなど、彼の孤軍奮闘の応援ぶりは次第にエスカレートしてゆく。 秋山さんにとってつらいのは、山梨県では、テレビで阪神の試合が全体の3割程度しか放送されないこと。神宮球場など東京でタイガースを見る機会はあっても、30年のファン歴を誇りながらも、甲子園は彼にとって遠い遠い夢の彼方の聖地であった。 「いつか甲子園へ」の想いを胸に秘め、テレビの前でメガホンを叩く毎日が続いた。
今年春からの、映画「ミスター・ルーキー」の公開、そして星野阪神の快進撃を見て、ついに彼は「甲子園に行こう」と決心する。 7月29日深夜、たったひとり夜行バスに乗り、甲府から大阪まで9時間掛けて、試合が雨で流れないことだけをひたすら祈りながら甲子園を目指した。 翌30日は快晴、はやる心を抑えながら甲子園に足を踏み入れた。芝の輝き、土の黒さ、そして外野を埋め尽くす大応援団。テレビの中でしか見たことのない世界に自分が居ることの幸せに、彼は浸った。
試合は前半ベイスターズ相手に苦戦の連続だったが、6回代打八木の逆転満塁ホームランが飛び出し、バルデスが最後をきっちり抑えて4対2で見事タイガースが勝った。初めて訪れた彼を、甲子園はこれ以上ない理想的な姿で歓迎したのだ。いつもは一人で唄う六甲おろしを、3万人で一緒に声高らかに唄ったとき、もう秋山さんは独りぼっちではなかった。
−−− では次回もお楽しみに! −−−